美味しい煮込みラーメンを出す中華料理屋が新橋にある。
平日はどの時間帯も満席で、待たないと入れない。
私は食事の前に列んだりするのが苦手だから、
店の前はよく通るが、まだ食事をとったことがなかった。
東京マラソンのあった日曜日、早めに仕事を切り上げて寄ってみた。
ラッキーだ。並ばずに入れた。
注文し、氷水を飲む。
私は店内に大きな3枚の写真を見つけた。
飲食店ではあまり見かけない写真、店主の家族写真だ、
みな、良い笑顔だ。
幸福な家族。親子3代の写真。
店主が、家族を紹介している写真。
その右には、父親の家族の写真。
当然そこには店主の子供の頃が、兄弟たちと写っている。
そのまた右側にも、セピア色の祖父の家族の写真があり、父親の子供の頃が写っている。
店主から遡り、左から順番に3世代の家族の写真が、誇らしげに飾ってある。
私は嬉しくなった。
上手く言えないが、そんな感情である。
この一家はみな、凜としていて気持ちがよい。
どの子も姿勢がよく溌剌としている。
シナから日本に渡り、苦労が多かったと思う。
大陸には、祖父の兄弟らの家族がたくさんおられるであろうことも容易に想像できた。
人には家族があり、両親から生まれてくる。
私自身、縁が薄かった両親のことを想う。
私の両親にも両親がおり、その祖父らにも両親がいる。
いったいどれほどのご先祖様から、私は命を授かったのであろうか、
さらにその両親たちの両親らにも思いを馳せてみる。
大阪の、日本の、アジアの、アフリカの、ジャングルの、洞穴の、大木の上の、深海の、、、、
私という小さな存在は、自然の営みの偶然で降り立ったわけでなく、
ご先祖様から託された大切な命だと思う。
私は自ら掻き分けて、
この時代の、この場所に生まれたのだ。
最近、
涙腺が緩くなった私は目頭が熱くなった。
私の細胞のひとつひとつに刻み込まれた息吹に意志に血脈に、力強く生きなければならないと、
強く思った。
私を生かす、万人のご先祖様にもらったこの体を、この肉体を無駄にしてはいけない。
全力で生きなければ、ご先祖様に申し訳ない。
杏仁豆腐も注文した。
私は大昔のご先祖様を想う。
そして、
遠い未来の、まだ見ぬ子孫らに、
会いたくても絶対会えない1000年先の、
もはや人類ではないかもしれない私の遺伝子を持つ万人の子孫らに想いを馳せる。
もちろん、
煮込みラーメンも、杏仁豆腐も、
とても美味しかった。